チーム粉もん vs 白物家電


ミクロとかナノっていう微細な粉っていうのは、はっきりいって高く売れます。
粉もんチームで作った粒子でも、1gで1万円以上の値段で売れたものもあります。
金属の微粒子でサイズがそろっていたら、もっと高価なものもあります。
なんでそんな高い値が付くかっていうと、サイズが均一な微細粒子を作ることが難しいからなんですよね。
「ふるいとかザルで分ければいいじゃん?」って思うこともあるでしょう。
でも、例えば5マイクロメートルの穴が開いたふるいを用意したとしても、穴が小さすぎてなかなか落ちていかないんですよ。
微粒子っていうのは、大抵の場合はスマホとかパソコンといった精密機器の中の部材の一部として使われます。
精密機器っていうくらいなので、ちょっとでもサイズが違う粒子がいると、そこでショートしたり、部材が浮き上がったりしてしまいます。
なので部材メーカーさんは、使用時に不具合が出ないよう、サイズ保証がされている粒子を高値で買ってくれるんです。

そうして勢いで10万円の炊飯器を発注したチーム粉もん。
数日後、炊飯器が手元に届いたので、炊飯器メーカーを敵に回すような悪魔的実験を開始する…
といっても作業自体はとっても簡単。
ホモジナイザーという工業用のミキサーみたいなやつで、樹脂(油)と水と界面活性剤を強力撹拌!
するとあら不思議!界面活性剤の中に樹脂が閉じ込められたミセルが出来上がります。
このミセルの懸濁液を炊飯器に投入して、炊飯ボタンを押せば、踊り炊きパワーとIH炊飯ジャーの圧力がイイ感じになんか作用してキレイな粒子ができる…気がする!
炊き上がりを待つ間、上手くいったときのことを妄想するチーム粉もん。
我らはハイパーポジティブで思いついたら即実行な人間の集まりなので、上手くいくイメージだけは完璧に描けます。
が、駄目・・・・・!
結果としては、変な形の粒子やら、サイズが小さくいびつになった粒子やらが混ざったものが出来上がったののです。
つまり大失敗。
10万円の炊飯器をわざわざ買ったのに大失敗。
でもまぁ、そういうこともあるよね。
めげない、しょげないのがチーム粉もんの良いところなので、確認のためもう一度少し条件を変えて炊飯器重合をして、再度駄目なことを確認したのち、この炊飯器は実験棚の奥深くにしまわれることになったのでした。
おまけ

数年後、実験室を移動するときに炊飯器を発見!
迷うことなく産業廃棄物カゴにダンクしてきました。
※実験に使用したので、普通に小型家電としての廃棄はできません。産業廃棄物として業者に廃棄してもらう必要があります。
炊飯器メーカーのみなさん、本当にごめんなさい。
このマンガを読んでいる人はマネしないでね。
チーム粉もんという異色の開発チーム
入社後、化学系の開発エンジニアとして働き始めたたぬぴよです。
一番最初に所属した開発チームは通称・チーム粉もん。
個性派ぞろいの(自分含む)おもしろチームでした。
目に見えないミクロンサイズの粉になってくると、なんかもう理屈じゃないというか、教科書に出てくるような反応条件だとうまくいかないことってのが多々出てくるんです。
そうなってくると、もう常識をとっぱらって反応条件を見直す必要も出てくるわけです。
なので、我らチーム粉もんのモットーは「とりあえずやってみる」「勢い大事」の2つです。
この炊飯器事件はチーム粉もんを象徴する事件として語り継がれています。